気候変動の緩和

考え方・方針

気候変動問題への取り組み

気候変動による影響は年々深刻さを増しており、人々の生活、経済活動など様々な領域に大きな影響をもたらす可能性があります。この影響を緩和するためには、国や政府とともに、企業が果たすべき取り組みが不可欠となっています。
当社グループでは経営マテリアリティに基づいた気候変動問題への取り組みとして温室効果ガス排出量の削減や省エネ活動を推進しています。各種環境関連インセンティブ制度を導入し、環境情報管理ツールを活用することにより、グループ全体での活動状況や効果を定量的にモニタリングしながら温室効果ガス排出量の着実な削減に努めています。

気候変動対策の国際的枠組みである「パリ協定」※1に基づき、当社グループは、2016年に「2℃目標」に沿った長期温室効果ガス削減目標を策定していました。2021年7月に「1.5℃目標」の水準に削減目標を引き上げ、2050年におけるカーボンフリー実現を宣言しました。「1.5℃目標」目標では、2050年までに温室効果ガスの実質排出量ゼロを目指しています。この目標は、SBT(Science Based Targets:科学的根拠に基づいた排出削減目標)※2の認定を受けています。

当社グループは、英国CDP※3による気候変動の影響および温室効果ガス排出量削減への取り組みに賛同し、気候変動問題に関する戦略や温室効果ガスの排出量を開示し、取り組みの透明性を高めています。また、FSB(金融安定理事会)※4へ報告された、TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)提言※5への賛同も表明し、取り組みを推進しています。取り組みの進捗に合わせて、TCFD提言に沿った気候変動関連情報の開示の充実を図ってまいります。

  • 1 第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催されたパリにて2015年12月12日に採択された、2020年以降の気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定。国際的な目標として、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く保つ目標の設定、1.5℃以内に抑える努力を追求することが合意されている。
  • 2 科学的根拠に基づいた排出削減目標。「2℃目標」達成を可能とする水準で企業が中期目標(5年~15年先の目標)を設定することを促進する枠組み。SBTイニシアチブの審査を経て認定される仕組み。
  • 3 毎年、世界の時価総額上位企業に対して気候変動への戦略や温室効果ガスの排出量に関する情報の開示を求め、評価スコアを世界に公表している国際的非営利団体。
  • 4 主要国の中央銀行や金融規制当局等で構成する団体。金融システムの脆弱性への対応や金融システムの安定を担う当局間の協調の促進を行っている。
  • 5 FSBによって2015年12月に設置され、企業が気候変動に起因するリスクと機会を分析し、財務情報に反映させることを提言している。

ガバナンス

当社の取締役会は、重要事項の報告等を通じて情報を共有化することにより、当社の戦略・基本方針および重要な業務執行を決定し、監督を行っています。気候変動に関しては、取締役であるものづくり革新担当役員が監督責任を持ちます。CO2削減目標に対する進捗状況や主要な環境設備投資の状況について、環境安全の担当役員が報告しています。

取締役会の指揮・監督のもと、代表取締役社長 最高経営責任者(CEO:以下CEO)は当社グループ環境理念・環境行動指針・長期目標を制定しています。執行役員会(CEOおよび執行役員で構成)において、環境安全担当役員が社内カンパニーと主要なグループ会社のCO2排出状況を報告し、目標との乖離があった場合は、原因を明確にして対策を実施しています。CEOは、審議事項や報告において事業に影響を及ぼすと考えられる事案について、対応を決定し事業戦略に反映しています。

ESH(Environment, Safety & Health)管理に関するCEO直轄の推進機関として、当社グループ全体を管轄するESH委員会を設置しています。ESH委員会の委員長および委員はCEOによって取締役を含む役員から任命されます。ESH委員長は、気候変動に係るリスク、機会を含めた環境・安全・健康に関する重要な情報を各カンパニーおよびグループ会社から収集しています。また、確認のためESH監査、全社省エネ委員会などを各事業所に訪問して実施しています。これらのモニタリングから重要性の評価および重要と評価された事案への対策についてESH委員会にて審議を行っています。

会議名 気候変動に関する議題
取締役会
  • 主要アクション(環境):環境負荷低減(CO2排出量、年2回)
  • 環境負荷低減:CO2排出量、売上高原単位、省エネ・創エネ、環境配慮型製品の開発 (年4回)
  • 主要な環境設備導入(都度)
執行役員会
  • 環境負荷低減
  • CO2排出量、売上高原単位、省エネ・創エネ(年12回)
ESH委員会
  • 環境負荷低減
  • CO2排出量、売上高原単位、省エネ・創エネ(少なくとも年2回)

戦略(リスク・機会)

気候変動が事業活動に及ぼす影響を適切に把握・管理するため、2℃以下シナリオを含む複数の温度帯の外部シナリオを用いて、取引先や顧客を含むサプライチェーン全体のリスク・機会を分析しています。
ESH委員会の審議結果において、気候変動による事業への重要な影響を及ぼすと考えられる事案(リスク・機会)については、CEOの決定で事業戦略に反映しています。

今後、市場やお客さまの要求により、炭素価格の上昇や再生可能エネルギー電力の購入による運用コストの上昇リスク、再生可能エネルギー発電等の導入の資本的支出、省エネ製品開発のための研究開発費の増加リスクが想定されます。また、風水災によるインフラの損傷や電力の不安定化による事業中断などの物理的リスクも挙げられます。

一方、省エネラベリング制度の義務化等の法規制による新たなビジネス機会や、消費者の気候変動への関心が高まると、CO2排出量を抑える観点から、長寿命化への嗜好の変化に対してMRO(Maintenance, Repair, Overhaul)ビジネスの機会拡大などが考えられます。

今後も、環境に関連するリスク・機会の把握に努め、省エネ活動のさらなる推進をはじめとするリスクへの対策・機会の実現に向けて取り組んでまいります。

TCFDへの対応:リスク評価結果(参照シナリオ:IEA450/RCP2.6/RCP8.5)

TCFDへの対応:リスク評価結果

影響度については、発生頻度と財務的な影響度の2つの観点から、大・中・小に分類。

  • 発生頻度:頻繁に起きている/起きることが知られている/起きるかもしれない/起きそうにない/まずありえない
  • 財務的な影響度:深刻(50億円以上)/大きい(25億円以上~50億円未満)/中程度(5億円以上~25億円未満)/軽微(1億円以上~5億円未満)/極めて軽微(1億円未満)

リスク管理

ESH委員会において、気候変動に係るリスク、機会に関する重要な情報を各カンパニーおよびグループ会社から収集し、事業活動に大きな影響を及ぼすか否かの評価および重要と評価された事案への対策について審議を行っています。想定される影響額および発生(実現)可能性について評価し、優先付けをしています。リスクについては影響額にかかわらず、発生可能性の高いリスクについて、優先的に対策案を策定し、ESH委員会において審議を行っています。
また、ESH委員会では、気候変動以外に廃棄物、化学物質、従業員の安全、健康に関する評価も行っています。

指標と目標

2021年7月、当社グループは、2050年までの温室効果ガス排出削減の長期目標を引き上げました。

本目標は、グループ全体のCO2排出量を、2030年度で63%、2050年度で100%削減することを目指すものです(基準年:2015年度)。この削減目標はSBTに認定されています。

省エネ活動をグローバルに推進し、各生産拠点における高効率な設備の導入、最新の環境技術を活かした工場建屋の新築・建て替え等を計画しております。さらに太陽光発電をはじめとする様々な創エネ活動に加え、再エネ調達(証書購入)も実施することでCO2排出削減の長期目標達成を目指します。

排出削減の長期目標(1.5℃目標/Scope1+2)

  2015年度
(基準年)
2030年度
(63%減)
2050年度
(100%減)
グローバル排出量(t-CO2 54,803 20,277 0

また、自社だけでなく、サプライヤーへの展開活動も進めています。サプライチェーン全体で温室効果ガス排出量を考慮すると、製品・サービスの購入(スコープ3 カテゴリ1)の割合が高いため、サプライヤーにおける温室効果ガス排出量削減の取り組みが欠かせません。そこで、主要サプライヤー(年間調達額の70%を占める上位企業)の温室効果ガス排出量自主削減目標の設定状況を調査しています。2022年度時点で、主要サプライヤーの72%が温室効果ガス排出量自主削減目標を設定し取り組みを行っています。2025年までに、すべての主要サプライヤーが自主削減目標を設定するよう支援を行っていきます。

取り組み

単年度目標と実績

2022年度~2024年度の中期経営計画において、売上成長を追求する一方で、CO2排出量は2015年比で25%削減する目標を策定しました。2022年度には高効率空調、照明機器、変圧器の更新等設備に関わる省エネ活動を実施し、CO2排出目標の50,737ton に対しグループ全体の排出実績は47,033tonとなり、2015年比で14%削減となりました。引き続き省エネ活動等を実施していきます。

当社グループは、生産設備や空調の効率改善・エネルギーモニタリングシステムの活用により、長期目標達成に向けて省エネ活動を推進しています。今後も事業成長に伴う生産量の増加が見込まれますが、国内外で整備を進める新工場では、既存工場と比較してエネルギー使用量を40%以上削減することを前提としています。ここで培う省エネルギー技術やノウハウを国内外の既存工場にも適用し、グループ全体でのCO2排出量削減を図ってまいります。

単年度目標と実績(Scope1+2)

項目(グローバル) 2022年度目標 2022年度実績 評価
CO2排出量(t-CO2 47,898 47,033 達成
売上高原単位 0.209 0.152 達成
  • 集計の方針および基準は、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」「地球温暖化対策の推進に関する法律」に準拠し、環境情報管理に関する社内規定に基づき集計。集計期間は、2022年1月~2022年12月実排出係数は、年度毎に環境省より公表される事業者毎のCO2換算係数。集計範囲は、ナブテスコ単体および国内外連結対象子会社。 環境データ等集計範囲(Excel 20.9 KB) に詳細を記載。

グローバルCO2排出量と売上高原単位

グローバルCO2排出量とグローバル原単位(CO2排出量)

スコープ3排出量の算定

当社グループでは、事業活動全体における環境負荷状況を把握し効果的に低減するため、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量算定の取り組みを進めています。過去5年間のサプライチェーン全体における排出量は以下の通りとなりました。

サプライチェーン全体排出量 (単位:t-CO2

区分 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
直接排出(スコープ1)※6 ※7 8,781 6,599 4,491 4,061 3,893
電力使用等による間接排出(スコープ2)※6 ※7 61,395 53,874 48,073 41,021 43,140
その他の間接排出(スコープ3)※8 979,097 940,976 819,726 957,099 934,968
  • 6 集計範囲は、ナブテスコ単体および国内外連結対象子会社。
  • 7 集計の方針および基準は、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」「地球温暖化対策の推進に関する法律」に準拠し、環境情報管理に関する社内規定に基づき集計。
  • 8 集計範囲はナブテスコ単体

スコープ3のCO2排出量の内訳は以下の通りです。スコープ3のCO2排出量のうち、「製品・サービス購入」(カテゴリ1)が全体の78.7%と最も多く、次に「輸送・配送(上流)」(カテゴリ4)が16.6%となっています。

当社グループでは、今後もサプライチェーン全体における温室効果ガス排出量の把握および削減活動を推進してまいります。なお、算出データはLRQAリミテッドによる第三者保証を受けています。

スコープ3 CO2排出量算定まとめ(2022年度)

カテゴリ CO2排出量
(t-CO2
割合 備考
1 製品・サービス購入 773,875 82.77%  
2 資本財 35,801 3.83%  
3 エネルギー関連活動 6,354 0.68%  
4 輸送・配送(上流) 96,248 10.29%  
5 事業から出る廃棄物 909 0.10%  
6 出張 2,063 0.22%  
7 従業員通勤 1,589 0.17%  
8 リース資産(上流)   対象外(該当するリース資産なし)
9 輸送・配送(下流)   対象外(完成品は、委託物流のためカテゴリ4に含む)
10 販売した製品の加工   対象外(当社製品は完成品のため、販売後に加工を行わない)
11 販売した製品の使用 17,221 1.84%  
12 販売した製品の廃棄 908 0.10%  
13 リース資産(下流)   対象外(該当するリース資産なし)
14 フランチャイズ   対象外(該当するフランチャイズなし)
15 投資   対象外(該当する投資なし)
合計 934,968 100%  

2022年度スコープ3算定方法、対象期間、範囲は以下の通り。

  • 算定方法:サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(環境省、経済産業省)に準拠。
  • 算定期間:2022年1月1日~2022年12月31日

エネルギー使用量の削減

当社グループは、エネルギー使用量の削減に努めています。省エネ活動および省エネ設備への継続的な更新や、エネルギー使用量の大半を占める生産設備に電力量計を取り付け、過剰な電力使用や待機電力を把握して機器の改修や運用方法の改善を行っています。

また、エネルギー使用量をリアルタイムで把握できるモニタリングシステムを導入して、見える化を実現しています。

グローバルエネルギー使用量推移

グローバルエネルギー使用量推移

再生可能エネルギーの活用

当社グループでは、事業所への再生可能エネルギー設備の導入を推進しています。垂井工場(岐阜県)で太陽光発電システムの設置を開始し、以降毎年主要拠点に順次太陽光発電システムを導入しています。2021年に、垂井工場に増設を行い、2022年にNabtesco Power Control(Thailand)Co., Ltd.と上海納博特斯克液圧有限公司に増設を行いました。

当社グループは、今後も再生可能エネルギーの利用を積極的に推進します。

太陽光発電システムの発電量推移

太陽光発電システムの発電量推移

環境貢献に関する社内表彰制度

当社グループは、省エネ・創エネ等の活動を促進させるため多様な社内表彰制度を設けて毎年表彰を行っています。

項目 省エネ活動表彰 ナブテスコ賞 環境貢献達成度評価
対象 工場、グループ会社 従業員 従業員
KPI CO2排出量の削減
売上高原単位の削減
工場全体または
製品群単位でCO2排出量削減率
CO2排出量の削減
売上高原単位の削減
備考 賞金 賞金および賞状 賞与に反映

製品・サービスによる環境影響の緩和

当社グループは、風力発電機用状態監視システム(CMFS)、航空機部品、鉄道車両用ドア・コンプレッサー、自動ドア、精密減速機、油圧モーターなどの高効率化・軽量化により、最終的に温室効果ガス排出量の削減に貢献しています。また、鉄道機器、商用車、船舶、航空機、自動ドア、包装機などのMRO(Maintenance, Repair and Overhaul)事業を展開しており、MRO事業を拡大しています。本サービスは、修理やオーバーホールの体制を整備し、可能な限り部品のリサイクルと再利用を行うことによって廃棄物を削減すると同時に、製品の効率的な運用、製品寿命の延長によるリソース使用量の削減や温室効果ガス排出量の削減を支援します。

MRO売上比率

  2019年度実績 2020年度実績 2021年度実績 2022年度実績
売上高(連結) 289,808 279,358 299,802 308,691
MRO/売上高率 26% 25% 24% 25%

2021年度からは、室内環境の改善、バリアフリー、省エネを同時に実現する自動ドア「NATRUS+e」の販売を開始しました。人の動きを読み取り無駄な開閉動作やドアが開いたままの時間を減らすことで、外からの風の侵入を抑え、室内の温度変化を低減することができます。これらの効果により、室内環境の改善と省エネルギーを実現する製品です。

省エネ製品認定制度

本制度は、持続可能な社会の発展のために製品の環境側面を考慮して設計された省エネ製品の開発を促進し、地球温暖化防止に貢献するとともに社員の意識高揚を図ることを目的に創設されました。

認定された製品には、認定証書の発行、認定マークの付与、社内報での発表等を行います。
上市する製品を社内で評価し、認定基準の1項目以上に該当し、非該当項目で従来レベル以上を満たす製品を省エネ製品として認定しています。

2021年度は、ティーエス プレシジョン 株式会社の『スマートフォーミングマシンSF-L250-35』および『スマートフォーミングマシンSF-M150-25』を認定しました。『スマートフォーミングマシンSF-L250-35』の重量は従来比で11%削減、消費電力量も従来比で23%の削減、『スマートフォーミングマシンSF-M150-25』の重量は従来比で11%削減、消費電力量も従来比で33.7%の削減を実現し、顧客の省エネに貢献しています。当社グループは、ものを精密に動かし止める「モーションコントロール技術」のさらなる発展により、気候変動問題の解決に努めてまいります。

認定マークと認定証書

認定マークと認定証書

設定基準

小型軽量化 効率UP、損失低減 寿命改善 有害物質不使用
従来比 15%以上 従来比 15%以上 従来比 20%以上 含有なし

2021年度の認定製品

製品名 該当評価項目
小型軽量化 効率UP、
損失低減
寿命改善 有害物質
不使用
スマート フォーミングマシン SF-L250-35 機械重量を
11%削減
消費電力を23%削減 従来通り 含有なし
フォーミングマシン SF-M150-25 機械重量を
11%削減
消費電力を33.7%削減 従来通り 含有なし

製品ライフサイクルアセスメント

幅広い分野で使用される当社グループの製品は、そのライフサイクルで環境に影響を与えています。環境に配慮した製品づくりを行う為に、新規設計段階でも以下のような環境アセスメントを実施しています。

環境アセスメントにおける評価項目(一部)
  • 省エネ(製品の製造・使用段階における消費エネルギーの削減)
  • 省資源(製品の材料・部品数の削減、低排出原料の採用、包装材の簡略化)
  • リサイクル(再資源化可能な設計・分離構造の採用)

この環境アセスメントでは、すべての製品の環境フットプリントを削減する為に、製品の製造・使用段階の消費エネルギーを評価しています。また、ライフサイクルの段階毎に、数値で把握し、環境に配慮した対策を講じて環境負荷を低減する取り組みを続けています。その一端として、LCAの結果を示します。
製品・システムにおける環境負荷の発生源・改善箇所を特定するため、各主要製品(ナブテスコ単体)の調達から廃棄・リサイクルまで地球温暖化への影響(CO2排出量、化石燃料使用量)を評価しています。なお、原材料の廃棄処分量や製品の含有有害物質量はごく僅かであり、水については調達・製造・輸送・使用の各段階における消費はほとんどありません。また、CO2以外の大気汚染物質については、CO2排出量と比較して非常に微々たる量のため、LCA評価対象として考慮する必要がありません。従ってCO2(および化石燃料)のみのLCAが「full LCA」として十分であると判断しています。LCA評価結果は、既存・新規の製品設計に大いに活用されています。

  • LCA:Life Cycle Assessment(ライフサイクルアセスメント)の略で、原材料調達から製造、使用、リサイクル、そして最終的な廃棄処分にわたり、製品の使用する資源やエネルギーと製品が排出する環境負荷を定量的に推定・評価し、さらに製品の潜在的な環境影響を評価する手法です。
目的 製品・システムにおける環境負荷の発生源・改善箇所の特定
対象製品 各主要製品(ナブテスコ単体)
評価方法 環境問題として地球温暖化を評価(CO2排出量)
評価結果の用途 今後の製品設計に活用
システム境界 国内の調達から廃棄・リサイクルまで
各段階のCO2排出量比率(%)

これらの結果を踏まえて当社グループの製品は、環境配慮設計における重要な方向性を次のように考慮しています。

LCAの検討結果

項目 製品群 各段階の
CO2排出リスク
結果
(製品
開発の
方向性)
素材 製造 使用 廃棄
精機
カンパニー
精密減速機RVコンポーネントタイプ
ギアヘッドタイプ
ギアヘッドタイプ(テーブルモデル)
- 軽量化、
剛性UP、
リサイクル
精密減速機RV
コンポーネント
タイプ
ギアヘッドタイプ ギアヘッドタイプ
(テーブルモデル)
パワー
コントロール
カンパニー
クローラー用走行ユニット
ミニショベル用コントロールバルブ
油圧ショベル用旋回ユニット
- 軽量化、
リサイクル
クローラー用
走行ユニット
ミニショベル用
コントロール
バルブ
油圧ショベル用
旋回ユニット
航空宇宙
カンパニー
フライト・コントロール・アクチュエーション・システム
高電圧配電装置
- 軽量化、
MRO
フライト・コントロール・アクチュエーション・システム 高電圧配電装置
鉄道
カンパニー
ユニットブレーキ
鉄道車両用ブレーキ制御装置
鉄道車両用ドア開閉装置
- 軽量化、
MRO
ユニットブレーキ 鉄道車両用
ブレーキ制御装置
鉄道車両用ドア
開閉装置
舶用
カンパニー
主機遠隔操縦装置(M-800-VII)
電子制御油圧バルブ
GAPセンサー
- 軽量化、
MRO
主機遠隔
操縦装置
(M-800-VII)
電子制御
油圧バルブ
GAPセンサー
住環境
カンパニー
建物・産業用自動ドア
可動式ホーム柵
フルハイト式ホームドア
低消費
電力、
開閉
回数減
建物・産業用
自動ドア
可動式ホーム柵 フルハイト式
ホームドア

精機カンパニー・パワーコントロールカンパニーの製品は、素材の段階でのCO2排出が高いため、軽量化・MROに重点を置いた製品設計を行っています。また、住環境カンパニーの製品は、使用段階でのCO2排出が高いため、低消費電力・開閉回数減に重点を置いた製品設計を行っています。

気候変動対策コスト

当社グループでは、気候変動に係るリスク・機会を含めた環境・安全・防災・衛生等に関する重要な情報を収集し、重要性の評価および重要と評価された事案への対策について審議しています。

2022年度には気候変動のリスクに対して、平均気温上昇に伴い増加する空調エネルギーの効率化に効果のある空調機器の更新や、雨漏り・排水対策などを実施しました。それらに掛かった費用は約1億円でした。
また、2022年度における気候変動対応、環境配慮製品を含む研究開発費は約109億円でした。